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醤油とカビ菌

実は、醤油は菌の力なしでは作れません。菌というと、つまりカビの仲間です。カビというと汚いもの、嫌なもののイメージが強いですが、美味しい醤油を作るために、様々な菌の力が有効に利用されています。

まずは麹菌について。醤油麹を作られる際に使用される麹菌は、主にニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)と醤油コウジカビ(Aspergillus sojae)です。分類学的には、それぞれAspergillus flavusとAspergillus parasiticusという分類名がつけられています。

この分類学的なカビの原型は、アフラトキシン(aflatoxin)という猛毒を生産するカビなのですが、産業・工業用に使用するニホンコウジカビと醤油コウジカビはこの毒性を発揮することはありません。長年の研究や育成の過程において、このアフラトキシンを生成する能力がどこかで失われてしまったと考えられています。この麹菌が作る酵素が、醤油の味や香りの素となります。

次に、酵母について。仕込み過程の中ほどで使われる、アルコールの生成を担う酵母は「主発酵酵母」と呼ばれ、Zygosaccharomyces rouxiiという分類に属します。ちなみに古くなった醤油に白いカビが生えているのをご覧になったことはありませんか?あの白いカビも同種のものです。また、仕込み後期にその力を発揮する「後熟酵母」と呼ばれるCandida etchellsii やC.versatillsという菌もあります。

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醤油を使った炒め物や煮物には何ともいえない美味しそうな香り、つまり「芳しさ」が付きますね。あの香りは、この酵母たちが作っているのです。醤油の香りには、なんと270種類の成分が混合していると言われており、果物や花の香り等と共通する成分も含まれているそうです。

最後に、乳酸菌について。醤油に使われる乳酸菌は、耐塩性のTetragenococcus halophilusと分類される菌で、ヨーグルト等に入っている菌とは別のものです。ちなみにこの乳酸菌は、醸造の過程で自らが作った乳酸によりほぼ死滅してしまいます。この乳酸菌が作った乳酸による酸味が、私達の口に丁度良いpH状態を保ち、また味や香りを安定させる縁の下の力持ちのような働きをします。

いかがでしょうか。少し、「カビ」へのイメージが変わりましたでしょうか?

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